ショップ選びにご用心
僕には非常に気の合う車好きの友人がいたのですが、
彼はあるショップとのつきあいに辟易して車趣味自体からリタイアしようとしています。
僕はイタリア車党なのですが、彼は大のイギリス車党で
職場の若い人間が集まって車の話をするときに暗黙の役割分担みたいなのができていて
イギリス車に関することなら彼の独壇場でした。
そんな彼がバンデンプラス・プリンセスをKの国道XXX号線沿いにある某ショップから
160万円で購入したのは約2年前でした。メジャーな自動車雑誌に広告を載せている有名店です。お世辞にも程度がよいと言える個体ではありませんでしたが、
あのたたずまい、皮シートとウォールナットの内装、どれをとっても
まさに彼が理想としたイギリスがそこにありました。
ところが、納車前整備費をきちんと収めて届けられた
その車はプラグが1本抜けているは、ステアリングは曲がったまま取り付けられているは、
フォグランプの配線は千切れているは、という状態でした。
納車前の整備で彼等はいったい何をしたのでしょう?いわゆるエンスーショップなだけに、
お客に車いじりの楽しみを与えるようわざわざプラグや配線を引っこ抜いたのでしょうか?
とにかく僕達はよく一緒に職場の駐車場でそのバンプラをいじりました。
あるときはスターター・ソレノイドの接触不良、またあるときはウォーターポンプの交換...。
それはそれで充実した時間だったことは間違いないのですが。
そんな彼がある国産中古車屋でRV、4駆車のなかに埋もれて寂しく余生を送っていた
MG-Bを発見したのはそれから1年ほど後のことでした。
あのMGを救わなければならない、という義務感に駆られた彼は値引き交渉をして
60万円でそのMGを引き取ることになりました。
ウレタン・バンパーだったそのBは彼の地道な作業で見事なメッキコンバージョンの
美しいオープンカーへと変身していきました。しかし、ごく普通のサラリーマンである
彼が2台の少し古い英国車を維持していくのは限界がありました。
バンプラは彼の努力によりKのショップの店頭に並んでいた頃より遥かに
機械としての程度は良くなっていましたが、如何せんボディや内装のヤレだけは
年式相応と言わざるを得なかったので、個人売買で90万円で売りにだすことにしました。
何人かの方から問い合わせがあり、写真を送ってほしいとか、
奈良県から埼玉県まで車を見にきてくれた方もいらっしゃいました。
しかし、最終的にそのバンプラを維持していく自信のある方が現われずに
いよいよ車検がきてしまいました。そこで、彼はバンプラを買った
そのショップを再び訪れたのです。納車の時に非常に嫌な思いをしたので、
できれば縁を切りたいと思っていたのですがそれ以外の方法を考え付かなかったのです。
そのショップでは2年前に160万円で売った車を65万円で引き取ると言い
、彼はその場で覚書にサインを貰ってバンプラと別れを告げました。
信じられないことが起ったのはその数日後です。そのショップから彼の所に
電話がかかってきて、よく見たら50万円でしか引き取れない!と言うのです。
○月○日に65万円を振り込むという覚書にサインまでしておいて、車をよく見たら、
というのです。彼等は車を良く見ないで売買を繰り返しているのでしょうか?
商売人にあるまじき行為ではないでしょうか?
僕は公共の消費者相談窓口に相談するように進言したのですが、ショップとのやり取りに
疲れ果てた彼は結局その中間の値段で売り渡してしまいました。
この文章を書いている現在でもまだ振り込まれておりませんが...。
僕が腹立たしいと思っているのは、今回の事件によって彼が旧車趣味自体から
足を洗ってしまうのではないか、ということです。
まるで某ショップによって親友を奪われてしまったような気分です。
それどころか会社の走り屋系の若い人達が彼の話を聞いて、
彼がやっていることを見て少しずつ輸入車や旧車に興味を持ってきてくれていたのに、
ここで彼が抜けてしまったらその雰囲気さえ失われてしまいそうです。
某○○オートは彼等の愚行によって将来の我々の仲間を、そして
自分達のマーケットとなるべき芽を取り去ってしまいそうなのです。
何より彼等は一人の偉大な旧車趣味人を抹殺しようとしているのです。
どうか皆さんもショップ選びには十分にお気を付け下さい。
戻る